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 アイラの体は固まって立っているクラスメートに向かって落下して行ったのです。ぶつかる、と思いました。床よりは人間がクッションになった方がダメージが少ないだろう、と思ったのですが、紫霧がわずかに鏡の角度を変えたために、アイラは床に叩きつけられ跳ね返り、机をなぎ倒しました。  鉄パイプの脚が別の机にぶつかりガシャッと耳障りな音を立てました。窓から飛び込んで来た黒猫が、倒れているアイラに駆け寄り、ニャアニャアと鳴きながらアイラの体の周りを行ったり来たりしています。 「………………………間に、合わなかっ…………………………………」  ガクリとアイラの身体の横に膝を落としました。アイラの上に、影、つまり私…が不自然に覆いかぶさっていましたが、人間が抱くだろう不自然さに気を配る余裕はありません。アイラは天井と床に叩きつけられたせいで、意識を失っていました。 (すぐに紫霧から引き離し、安全な場所に連れて行かなければ)と思いましたが、「人前で人型にならないで」と常から言いつけられている言葉が頭をよぎりました。  影の姿のまま運んだら、アイラの体は宙に浮いて移動しているように見えるでしょう。目のいい人物なら、私の姿が、うっすらと黒く透けて見えるかもしれません。  クラスメート達の目には、ますますアイラがバケモノじみて見えてしまうことでしょう。
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