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それでも、(やむを得ないか……)とアイラを抱き上げようとしたところ、「大丈夫?!」と耳慣れた声が上から降ってきました。
「一来!」
一来が仏様のような穏やかな顔で隣にしゃがみ込みました。
心配そうに、アイラを頭からつま先までさっとみると、「怪我はないみたいだけど、頭を打ったかもしれないし」と呟きました。
「あれ? なんだ、この線……?」一来はアイラの袖から覗いている腕を持ち上げました。
「なんだこれ、ヒビ? みたいな……」
白い腕に、木の根が這ったような線が生じています。
「やはり……」
「ざーんねん。壊れなかったね。逆さ鏡は、アイラを砕くには、まだ食べたりなかったかなぁ? ああ! それとも、時間がかかっているだけかなあ?」
いつの間に側に寄ってきていたのか、紫霧が膝に手をついて、アイラを「心配そうに」覗き込んでいました。
ズキッと胸が痛むのを、気が付かぬふりをして、「一来、すみませんが、アイラを安全な場所に移動させてください」と耳打ちしました。
アイラの事と一緒に私の事も忘れている可能性が大きいと思いましたが、一来はくんくん、と鼻をならしました。
「ジャスミン……。フラーミィ! わかった。ここはまかせて」と私にささやき、アイラを抱きあげようしました。
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