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紅霧は前足を片方上げました。
そして……………………、そのまま三分が経過しました。ウルトラマンは一仕事終えられるし、カップラーメンは出来上がる時間です。
「紅霧? どうしたのですか? 早くトゥラナを」と催促しても、眉間に皺をよせて目をつむり、じい、っとしています。
「さあ、早く」
「うにゃ~~~~~~ん」
紅霧は変な声でうなりながら、毛を逆立てて踏ん張っている様子ですが、いっこうにトゥラナは出てきません。
「どうしたんですか? 紅霧? 前にトゥラナを出したとき、そんな変な呪文、唱えていましたか? もっとこう、スマートに、すいっとお出しになっていたような?」
「むぅ~~~~~~~~ん。ダメ、トゥラナが出せない」
紅霧は、床に伏せました。申し訳なさそうに、耳も頭にペタンと付けています。
「ど、どうしてですか! このままではアイラが」
「なんでだろうねえ」
紅霧は困り果てたように、前足でカシカシカシ、と左耳の後ろを掻きました。
「おや? 紅霧、ちょっと」
「にゃ?」
左耳の毛を指先でかき分けると、黒い線が根っこのように、ほんのうっすらと這っていました。
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