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「やっぱり、ヒビが入っていると思ったのは、気のせいじゃなかったんですね」  最初にヒビが見えた時よりも、むしろ色が濃くなっています。 「紅霧……」  黒いヒビが見えるように手で毛を抑えて、紅霧に鏡を見せました。 「ヒビがあるね。逆さ鏡も鋏の次にあたしじゃあ、力不足だったのか……? まあ、即、砕けなかったのはよかったけど、このヒビのせいで精命が弱まって、トゥラナが出せないのか」 「紅霧、冷静に分析している場合じゃないわよ。水神様の水がもらえないなら、私たち、砕けるのを待つしかないってことじゃない……。大体、神木紫霧の目的はなんなの?」  黒猫は顔を洗いながら、前足の隙間からチラチラとこちらをうかがっていました。  どうやら言おうか言うまいか……、迷っているようです。 「紅霧、話してください」 「仕方ない……。できれば知らせたくなかったけど。アイラは水神様の水で出来た鏡の力を体に取り込んでいるだろう?」 「鏡の世界の悪しき存在、エナンチオマーと戦った時のことですね。エナンチオマーは倒しましたが、白の鏡と黒の鏡が割れ、水神様の水がアイラの中に入りました」 「つまりね、アイラは鳥を呼べるんだよ」 「ええ? 私が、鳥を? それが本当なら、すぐにでも呼ぶけど?」
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