8/9
前へ
/214ページ
次へ
 紅霧がアイラを鳥探しから遠ざけようとしたのは、アイラ自身が生贄となる資格を持つ巫女だいうことを隠し通したかったからでしょう。アイラが自ら生贄になると言い出すのではないかと心配しているのです。  一来や稜佳のアイラの記憶が紫霧に奪われていると聞いた時、紅霧は「マズい」と焦っていました。それは、この世界にアイラを引き留める理由が削られていくような気がしたのでしょう。今ならば、これまでの紅霧の不可思議な態度の理由がわかります。  紅霧は見つめている私の視線を感じたのか、こちらを向きました。 「にゃん」  私は黙って、紅霧に頷いて見せました。 (気を付けよ、ということですね。わかっていますよ、紅霧。アイラを生贄にはさせません。紅霧はアイラが砕ける危険が生じているというのに、水神様の元へ通じるトゥラナが出せず、ふがいない思いなのでしょう。 こうなってしまっては、一刻も早く、紫霧の持つ鏡を壊し、鳥を探し連れ戻すしかありませんね。しかし紅霧がトゥラナを出せない以上、どうやって鳥を水神様の地へ運べばいいのか……?)
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加