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根拠のない希望にすがるのは、影のすることではありません。私達が未来に描くのは、確かな情報に基づく予測のはず。
私はこぼれそうになるため息を逆に吸い込むと、「諦めてはいけません! 我が真名、コキュ…………!」と言いかけて、ゴホゴホと咳をしてごまかしました。
(危なかった……。 コキュートス・ダークナイトの名にかけて!と、うっかり真名を名乗ってしまうところでした)
「あーあ、あとちょっとで、フラーミィを下僕に出来たのになあ。ざーんねーん!」
アイラはニヤニヤと笑って、私の胸を手の甲でぽん、と叩きました。と、その拍子に袖がめくれ、アイラの白い腕に走る黒い線が目に入りました。
「はっはっは! そう簡単に真名はもらしませんよ。」
私はヒビには気が付かないふりをして、笑いました。
私は主人の影。主人が砕ければ私も砕けます。しかし自分の心を覗き込んでみると、どうやら私は自分が砕けることについては、なんの感慨も抱かないようです。主人に隷属している影とはそういうものなのでしょう。
ただアイラには、わずかも顔をくもらせることなく、いつもの生意気な悪態をついてほしいと思うのでした。
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