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アイラはスマートフォンのイヤホンを耳に差し込むと目をつむり、ふんふんと鼻唄を唄い出しました。
私が玄関へと足を向けると、すれ違うように黒猫が横をすり抜けていきました。目で追いかけると、アイラが愛用しているちゃぶ台に飛び乗り、通電しているノートパソコンの上で丸くなりました。
(暖かいのですね。すっかり猫……)
私は肩をすくめて、廊下を歩きながらアイラの姿になりました。
「はーい」カチャ、っと玄関ドアを開けました。「えっ、と」と、私は主人の声で言いました。
主人の姿、主人の服、主人の仕草。影ですから、まったく同じはずです。ところが、です。
「ああ、フラーミィ、だよね? ウィスハートさんは大丈夫?」と一来が言ったのです。
なぜ私だと分かったのでしょう? 私は自分の身体を見回しました。うっすらと黒いフィルターがかかったようではありますが、見比べなければ気が付かない程度。いつもながら、完璧です。不思議ではありましたが、今は一来と稜佳の対応をしなければなりません。
「一来に稜佳! 何をしに来たのですか?」
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