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アイラはにっこりと天使のような微笑みを浮かべました。自分の要求を無理やり通そうとしている時こそ、アイラが素晴らしく清らかに見えるのはなぜなのでしょう? 不思議です。
「ああ、満月コロッケのこと? でも、今から?」と、一来はわずかに眉間をよせ、今度でもいいかな? という気持ちを醸し出しましたが、アイラは即座に「うん、今」とうなずきました。
アイラがいつも持ち歩いている青いリュックに、さっと手を伸ばしたとき、袖がずり上がって黒いヒビがチラリとのぞきました。
「あれ? アイラちゃん、その腕はどうしたの?」
「そういえば教室で色々なものが砕けてるよな? もしかして、それと同じ現象が起こってる……とか?」
アイラはまくってあった袖をさっとおろして、腕を隠しました。
「こんなの、なんでもない。大丈夫よ」
一来は、アイラを黙って見つめていましたが、やがて「コロッケが食べたいんだよな」とうなずきました。
「やったー」とアイラが喜ぶのを、一来は穏やかな顔で見守っていましたが、ふいに慌てた様子で、「あれ? ちょっと待って。今日って何日だったかな。確か……」と、スマートフォンのスケジュールアプリを慌ただしくチェックし始めました。
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