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「それに一来君とあたしは知りたいの。なぜこうなってしまったのか。アイラちゃんと過ごした記憶はない。記憶がなくなった、っていうこともわからないけど、でもあったはずだ、とは感じるの。 だって一緒に過ごした時間がなかったら、アイラちゃんと話すのがこんなに自然だなんておかしいよ! それに……、アイラちゃんと話すのが楽しいの。 逆に、過去を思い出そうとすると、もどかしい感じがする。 たとえばね、木曜日のファミリーレストラン、本当はアイラちゃんもいたんじゃないの? 時々、思い出の中の光景と感じるはずの感情が食い違うから、すごく気持ち悪いの」 「よくわからないわ。どういうこと?」 「僕と稜佳ちゃんの記憶の中では、ファミリーレストランには神木さんがいる。ただ楽しく話してデザートをたくさん食べただけの記憶なんだ。その後、神木さんと別れて、稜佳ちゃんと満月コロッケを」 「満月コロッケの話はもういいわ」 「あ、ごめん。ええと、だからファミリーレストランの記憶は『楽しかった』という感情だけを思い出すはずだろ? それなのに……」 「うん。なんだか息苦しくなるの。悪いことをした、そんなモヤっとした気持ち悪さがわきあがってくるの。一来君に聞いたら、同じことを感じてた。だから二人で相談してアイラちゃんに会いに来たんだよ。だから、教えてアイラちゃん! 聞くまで、帰らないから!」
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