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 二人はまるで睨むような強い瞳で、アイラを見つめました。アイラは何か言いかけて、またキュッと唇を引き締めるように閉じました。それでも二人が微動だにせず、アイラを見つめ続けていると、ふっと口元がゆるみました。アイラは軽く肩をすくめると、首を縦に何回か振りました。 「ああ、もう! わかった。説明する。隠しておいたら、かえって危険に飛び込んでしまいそうだし。ええと。私が影に精命(まな)を与えて、操ることが出来る、というのは忘れていないのよね?  フラーミィを忘れていないんだから。私のその能力は水神様の力を封じ込めた鏡を、一族の始祖がいただいたからなの。そしてその能力は女性だけに隔世遺伝してきた。ここまではOK?」 「鏡……。その鏡に私は囚われちゃったんだよね? はっきり思い出せないけど、私が助け出された後も、他の誰かが鏡に囚われて。その鏡が割れて水になって、誰かの中にそそがれた……」 「誰か…ですか? もしかすると、アイラの印象が強いせいで、紫霧と置き換えることができなかった記憶は、それ自体があいまいになっているのかもしれませんね。稜佳、その水がそそがれた『誰か』というのが、アイラです」 「そうだったんだ……」 「思い出せなくてもいいわ。とにかく、私に影を操る力を与えてくれた水神様の島に生えている神樹があるの。そしてその神樹から、世界を照らす太陽が生まれる。  だけど、太陽は眠っているから、鳥が鳴いて起こすらしいの。鳥の鳴き声で太陽が目覚め、私たちの世界を照らす。そしてまた太陽が生まれる……と、繰り返しているの。  その水神様の地に棲んでいた鳥が、盗まれた。盗んだのはおそらく、紫霧。私の存在を消そうとしているのも、たぶんね。鳥には太陽を目覚めさせるという大事な役目があるから、鳥を連れ戻すか、さもなければ巫女が生贄(いけにえ)にならないといけないってことみたい」
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