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「アイラ、それは美しい自己犠牲の精神ですが、残念ながら時間がありません。それにアイラが砕けてしまったら、太陽を目覚めさせる手段はなくなってしまいます。今は水神様が食い止めていますが、いずれ湖の水が枯渇し、太陽が神樹を焼いてしまうでしょう。猶予はないのです」 「アイラの邪魔はしない。守ってくれなくても、自分の身ぐらい自分で守るよ」 「私も! お願い、アイラちゃん」稜佳は両手を胸の前でお願い、と合わせました。隣で一来も腰を九十度に曲ると、二人で頼みこみました。  アイラはしばらく二人を黙って見つめていましたが、やがてふーっと息を吐きだしました。 「……わかったわよ」 「やった!」 「だけど、鳥を見つけて、無事にトゥラナに行って、太陽を正しい位置にもどし、私のヒビも消して、それで帰ってこられたら、一来は皆にコロッケをおごること! いいわね」 「ええっ?! なんで……?」 「まあまあ、いいじゃないの。これでやる気倍増するなら、安いものだと思うけど? それじゃあ、やく・そくね!」と稜佳は言いながら、顔の横で両手の指をチョキの形にして、二回、折り曲げました。それにつられて、アイラと一来もカニのポーズでクイクイ、と指を曲げました。
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