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「あれ? なんだっけ、これ」と、稜佳は自分でやったジェスチャーだというのに、首を傾げました。「なんだか忘れちゃったけど……楽しい気持ちになるね! ねえ、アイラちゃんと私たち、仲がよかったんだね。ああ、一緒に過ごした時間、全部思い出したいな……」  稜佳は自分のチョキの形の指を見つめて、ため息をひとつこぼしました。 「稜佳、このポーズはね、フィンガークォーツって言うのよ。強調したい単語の前後で、こうやって、ニキニキ、ってするの。思い出は忘れても、やったことがなくなるわけじゃない。その時感じた感情も、消えた訳じゃない。そうなんでしょ? 稜佳」 「そうだけど」稜佳はネックレスを握りしめた。「でも、やっぱり」 「そうね……私の過去を乗っ取ろうとするなんて、百トゥラナ早いっていうのよ!」というと、ドン、と床を足で打ち付けました。  しかしアイラの気合いとはうらはらに、一来と稜佳は顔を見合わせると、「ごめん、その例え、ちょっとよくわからない」と困った顔で言いました。 「え………………? あ、そ、そう。だった?」 「おや、アイラ、顔が赤いですよ。まあ、冗談がスベったからって気にすることはありませんよ。アイラは芸人ではないのですから」と、私はアイラをなぐさめました。
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