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アイラの母、サラのほっそりした身体のどこにそんなバイタリティがあるのか謎ですが、週に五日間はフィンランド語の講師を勤めているいくつかの大学や北欧の文化を紹介する講演のために飛び回っているのです。
会場が遠方のため泊りがけになることも多く、サラが家でゆっくり朝食を作っていることは珍しいことでした。
サラはアイラをギュッと抱きしめ返しました。しかし、突然「きゃっ!」と言って、飛び上がりました。
「何か足に触ったのよ……! あら? 猫ちゃんだったの? アイラ、この猫どうしたの?」
「紅霧よ。おばあちゃんの影の紅霧、覚えてる?」
「紅霧さん。知ってはいるけど、私はほとんど会ったことがなかったと思うよ」
「そうだったかな」
「そうよ。アイラが子供の頃に、紅霧さんが遊んでくれている所を遠目に見かけたことがあるかなあ、っていうくらい。それでは、紅霧さんも一緒に朝ご飯をいかがですか?」
「なーお」
「じゃあ、支度しちゃいましょう! アイラ、ブレックファーストはヴォイレイパ(バターパン)でいい?」
「いいね! 具はなに?」
「チーズ、キュウリそれに、パストラミビーフ。自分で好きなだけパンに乗せて食べて。トマトも入れようかと思ったのだけど、きっとベチャベチャになっちゃうよね? だからトマトだけ乗せない方がいいかも」
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