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「けっこうです」きっぱりと断ると、「ケチ……」と稜佳がふくれました。 「ケチ?! ケチとは心外です。ケチと言うのは、金銭を出し渋ることだと思いますが、私は何一つ稜佳から購入していませんよ?」と抗議しました。  しかし稜佳が返事をする前に、紅霧の鋭い声がとんできました。 「ちょっと、稜佳にフラーミィ! 遊びじゃないんだよ! 鳥の一番の特徴は、鳴き声で」と、紅霧は勢いよく言いかけて、口をつぐみました。 クモのマミが糸を飛ばして、紅霧の頭に飛び乗ってきたのです。 「マミじゃないか! どうしてここに?」 「紫霧を見張ってもらっていたんですよ。 ということは、紫霧がここに来るということですね。どうやらこちらも、見張られていたようです。危ないですから、一来と稜佳は隠れていてください」 「わかった。行こう、稜佳ちゃん」  一来と稜佳が少し離れた場所に身をひそめるのを確認すると、私は人型になりました。変身の名残に、つむじ風が私の足元をクルリと回ってジャスミンの香りをまき散らし、空中に散っていきました。
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