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私は自分の人型の姿を確認し、ポンポン、と埃をはらいましたが、その手がふと止まりました。自分の足首の靴下が目に入ったのです。
人型の時に身にまとっている、黒いスーツにつま先の尖った革靴は、私のお気に入りのスタイルですが、ズボンの裾からくるぶしが出てしまうのは、残念です。
人型の時の私は、身長が二メートル近いので、体に合う服はほとんど市販されていないのです。ましてアイラがメンズの衣服には気に入るデザインがないといって、女性用のスーツから選ぶので、なおさらなのですが、私は影です。
「服に体を合わせるなんて、簡単でしょ? ちょっと足を短くすればいいんじゃない?」とアイラはしれっと言うのですが、おそらく見下ろされるのが嫌なのでしょう。
反対に私はアイラを見下ろす身長差が気に入っているので、足首が服から出てしまうことくらいは織り込み済みです。やや不満ではありますが。
「さて。戦いますか? アイラ」
「……いえ、待って。なんだか様子が変よ」
紫霧は体を傾けた姿勢で、時折ふらつきながら、近づいてきます。
「おや、確かに。どうしたのでしょうね」
「ひっ」
隠れてこちらの様子をうかがっていた稜佳が、ひゅっ、と息を飲む音が聞こえました。その声を聞きつけたのか、紫霧は紫色の斑でまだらになった顔を稜佳の方に向けました。
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