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「分かっているくせに……。生き物の方がもちろん、鏡にはご馳走なのぉ。それにアタシが壊さないとのはアイラらしね。 でもアイラがダメなら、他の人間で代用するしかないかぁ」と言うと、唇を横にひいてゆがんだ笑みを浮かべました。  そして鏡を取り出すと、稜佳のいる方に向けました。  瞬間、アイラが鏡を遮るように飛び出しました。 「罠です! アイラッ!」  稜佳の姿は木の陰に隠れて、見えていませんでした。鏡には映りません。紫霧の策略にまんまと()められたのです。 「きゃっ!」  アイラの体が鏡に映り、すうっと上空に引きあがりました。あやつり人形が糸で吊り上げられているように、不自然に肘や足首、腰や頭が上空に引っ張られています。 「砕!」という声が紫霧の声が響き、アイラが糸を切られたように、地面に突然、落下しました。地面に叩きつけられる瞬間、私はその体をこんどこそ抱きとめました。  同時に、紅霧の黒い尻尾が鞭のように伸びてしなり、逆さ鏡を打ちました。紫霧の手から逆さ鏡が弾かれて跳び、噴水のコンクリートにあたって、ピシッと音を立てて割れました。 「同じ手は二度通用しませんよ」
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