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 紅霧の出したトゥラナは三メートル程の大きさでしたが、目の前の立方体は小さなビルほどの大きさがありました。 そして銀色の柱で出来た立方体の中に、もう一つの立方体があります。外枠の立方体と中に浮かんでいる立方体は、たえず内と外が入れ代わっています。 騙し絵を見ているような、その奇妙な落ち着かなさが、見ているものの不安をかき立てました。 「四次元……?」一来が呆然と呟きました。「実物を見たのは初めてだけど、これと似たものを動画で見たよ」  紫霧は口元に笑みを浮かべ、優雅にゲートの中に足を踏み入れました。 「待ちなさい。鳥はいいのですか? 鳥がいれば、世界は元通りになるはずです。そうなったら困るのではないですか?」 「あんたたちには、鳥を見つけられないし、捕まえられない。だから問題ないね。アイラの時間はもう尽きる。それにこの世界もね。じゃあね、残り短い世界、楽しんだら?」  紫霧の姿がゲートに吸い込まれると、銀色の立方体が紫霧を飲み込むように包み、姿が見えなくなりました。そしてどこからか、ケケケケケケケ……という笑い声が響いてきました。 「紫霧さん、いなくなっちゃたよ! なんで? どうして?」
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