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 ひんやりとした風が通り抜けて行きました。そして風が連れてきた雲が空を覆い、空が暗くなると、大粒の雨が地面に落ち、地面に黒いしみをつけました。否応なく埃の匂いが鼻をつき、「雨だ」と一来がつぶやきました。  雨……。そういえば、もうずっと晴れていません。水神様の太陽が目覚めないせいでしょう。私たち影は、イヤな予感などというものは感じません。感じるのは情報から導き出される確かな予測です。 「おそらく、太陽が大きくなりすぎて、神樹を焼き始めているのでしょう」 「はやく鳥を探さないと!」 「でも鳥が見つかったとしても、間に合わないかもしれないし、やっぱり私が」 「アイラ! ゴチャゴチャ言っている場合じゃないよ! 紫霧をとっつかまえて、水神様の地につながるゲートを出させるんだ。 紫霧を追いかけるニャ!」というと、紅霧は消えかけているゲートに飛び込みました。 マミがその紅霧の頭に飛び乗り、続いて一来が眼鏡を指で押さえて、紫霧を追いかけていきました。稜佳は「待ってぇ、私も行く!」と、駆け寄ったものの、なぜかゲートの手前で一度立ち止まり、鼻をつまんで息を止め、目をつむって両足を揃えてゲートの中にジャンプしました。  私とアイラは目を見交わしました。 「フラーミィ、私たちも行くニャン?」と、アイラがくすりと笑って、私を見上げました。 「承知いたしました」と、私はアイラを横抱きして立ち上がると、ゲートの中に足を踏み入れました。
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