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「ちょっと失礼します」と言って、そっと紅霧の耳の毛をかき分けると、確かにヒビは消えていました。横から覗き込んでいたアイラが、自分の腕をまくりました。 「私のヒビもなくなってる……見て」  アイラは腕を皆に見えるように伸ばしました。ヒビは消えています。  しかし見ているうちに、またヒビが入り始め、長く伸びていきます。 「キャアアアァァァ! アイラちゃん!」稜佳が叫び、アイラのヒビを上から手で強く押さえました。「嫌、だめ! ダメぇ!」と、抑えるだけでは足りない、というように、アイラの腕を抱きしめました。 「大丈夫よ、稜佳。痛くないから」  アイラは目を見開き、冷静にヒビを食い入る様子を見つめました。そしてチラッと紅霧に走らせました。紅霧の耳にヒビが入り、ピリリと裂け始めました。 「進みましょう!」  私はアイラと紅霧を両腕に抱え、立ち上がるとゲートの中を走り出しました。 「僕たちも行こう!」  一来がにじんだ涙をぬぐっている稜佳の腕を引っ張りました。立ち上がり、私を追いかけてくる気配を背中に感じます。
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