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「この階段を登ってみよう。さあ、こっちに飛び移ってきて」と稜佳に呼びかけました。 「ちょ、ちょっと私は無理!」  稜佳はゲートから底なしの空間を覗き込むと、ジリジリと後ずさりしつつ、首を横に振りました。 「稜佳、失礼いたします」と断り、私は稜佳を横抱きにして、ジャンプしました。アイラがすでに四角い箱状の建物側にいる以上、飛び移る以外の選択肢はありません。すなわち、迷うなどということは時間の無駄なのです。 「さあ、一来も早くこちらへ」と振り返ると、一来もゲートから下をのぞきこんで、足を震わせていました。 「そんなに距離はありませんから、一来も速く、さあこちらへ」 「あ、足がすくんで」 「はい? どうしてですか? たかが二メートルの距離ですよ。一来なら飛べますよね?」  まあ、生まれたての子ヤギのように足を震わせていなければ、ですが。「迷う」などということは時間の無駄ですが、一来が足をすくませながらも、飛ぼうと勇気を振り絞る姿を眺めるのは悪くありません。しばらく悩める一来の姿を堪能しよう思っていたのですが、アイラの無粋な声が私の楽しみを妨害しました。 「フラーミィ、サッサと一来をこっちに連れてきて」
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