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「アイラ、そういう問題ではないと思いますが」
「あの、これって、ペンローズの階段みたいなものじゃないかな?」
「ペンローズの階段って?」
「説明するより、見てもらった方が早いかもしれない。マミ、ついて来ているよね? ちょっと手伝ってくれるかい?」と、一来が言うと、黒猫の頭の白い部分に埋もれていた、小さなクモが顔を出しました。
一来が手のひらを差し出すと飛び移り、見上げました。丸い目を玉虫色に光らせています。
「マミ、糸を使って、下に降りてみてくれる?」
白い階段の縁には手すりがなく、ただの石の階段の螺旋になっていて、中央部分はなにもない空間になっています。マミは一来の手に糸を付けると、するすると下に降りて行きました。
覗き込んでマミを見送ると、空間には乳白色で光の粒が不規則に動いていました。マミの姿がだんだん小さくなり、見えなくなりました。
「ちょっと一来、マミちゃんが見えなくなっちゃったよ。大丈夫なの? マミちゃんに危険な事させないで……きゃっ!」と、アイラが小さく声をあげました。
「な、なに?」
アイラは体を起こし、頭に手をやりました。
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