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目を覚ました稜佳が、腕にしがみついてきました。昔話の桃気分の、のどかな遊泳さえも、稜佳にとっては残念ながら恐怖の序章にしか感じられないようです。
「あははははははは! ねえ、どこまで登りたい? 登りたいだけ登らせてあげられるんだよ?」紫霧の楽しそうな笑い声が響きました。不思議なことに、音源がどこから聞こえてくるのか、まったく検討がつきません。
「紫霧! 姿を見せなさいよ!」
「高次元の存在に対して、ずいぶん生意気なんだね」と、声にわずかに苛立ちが混じると、水の流れが早くなりました。
「きゃああああ!」稜佳が叫びました。
黒猫が一瞬水に沈み、ヒヤッとしましたが、すぐに浮上して自力で水上に顔を出しました。猫の姿とはいえ、さすが紅霧です。マミも紅霧の頭のにしっかりとしがみついています。
「あはは! 登れ登れ!」いっそう楽しそうに紫霧は笑います。
「紫霧も同じゲートを通ったのに、一体どこに行ったのかしら?」
「つまり、このグルグル世界から抜け出せる、っていうことか……」
「ねえ、なんでもいいから、早くなんとかして! またあのバンジーポイントが出て来たよ」稜佳が一来の腕を揺さぶりました。
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