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「どうでしょうね。見た目では違いがわかりませんね。ですが、このゲートはどこかに繋がっているのでしょう。行けばわかります。では行きますよ!」というと、泳ぐ足に力を入れて、ゲートを一気にくぐり抜けました。  白銀色に輝くゲートを抜けると、水はなく、不思議な空間が広がっていました。右も左も上も下もなく、地面も床もありませんでした。壁も天井もなく、無限の広がりを持っています。  しかし私たちはゆるゆると空間の中に止まりました。  見回すと、真っ暗な空間にキラキラと微細な光の粒子が散っています。宇宙空間のようでもありますが、シャボン玉のような大小さまざまな大きさのあぶくが浮かんでおり、海や湖、山や森が封じ込められていました。  ある泡の中には、宇宙が入っており、星が瞬いています。そしてあぶくはそれぞれ楕円の軌道を描いて動いており、一見無秩序の動いているようでぶつかったりはしないのです。 「万華鏡の中にいるみたいだね」 稜佳がくるくると変わっていく景色を見回しながら言いました。 「よく来た」  厳格な低い声でありながら、同時に脳がしびれるような甘美な声でした。 「カルパ様、下位の次元の者とお話になるなどもったいない……」 紫霧の声がひかえめに制しました。
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