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「自分の世界が危機に陥ったら、なんとかしようとするのが生き物の責務じゃない? それが罪だというの?」凛としたアイラの声が耳に快く響きます。  しかし神に物申すのは、危険です。私が身をもって感じているというのに、アイラを止めようにも、ただの影となってしまっては、なすすべがありませんでした。アイラを止めるどころか、意識を手放さない事だけで精一杯なのです。 「累々と積み重なる刻の前には、世界の一つなどどうなろうと塵のようなこと……。神の意にそむくことはゆるされない」 「黒炎を元に戻して!」 「物分かりの悪い子。けれど怒りに燃える青い瞳はとてもうつくしい。ではその瞳に免じて、ひとつ助言しよう。影の心配をするよりも、自分のヒビの方を治してほしいと懇願しなさい。ほら、自分の腕をご覧」 「……腕?」  アイラが袖をまくり上げると、稜佳が悲鳴をあげました。 「キャアアアアッ! アイラちゃん! 腕が、腕が……」
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