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 ふいに、こつん、とかすかな振動を感じました。紫霧がつま先で床を蹴ったのです。幼い子がいじけた時に、気持ちを言葉にすることも出来ずにするように。  ほとんど影の状態の私には、紫霧の表情を見ることは叶いませんでしたが、泣いている、とそんな気がしました。それがなぜなのか、私にはわかりませんでしたが。 「黙れ。これだから、下位の次元のモノはわずらわしいのだ。体など物質に過ぎぬ。たかが物質の消失でわめくとは、まったく礼儀を知らない人間達だ」と、笑いを含まない声がすると、上空の空間が歪み、黒く輝く女神がゆっくりと姿を現しました。dd470983-3970-41b6-b87b-5d7a83b5a165イラスト:水色奈月様
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