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 遠く見上げる位置で留まっている神カルパは、全身が淡く光を放ち、眩しい程ではないのに直視できず、一来と稜佳は目を伏せてしまいました。神々しいというのはこの光を指すのでしょう。知識としては知っていましたが、体験するのは初めてです。  神カルパは、時計の歯車が透けて見える透明な円盤のようなものの上に立っていました。甲冑(アーマー)で覆われた右手には、長い剣のような時計の長針を携え、青から黒のグラデーションを描いているレースのハンドカフスに包まれた左手には鍵の付いた鎖が巻き付いています。  胸元は紫色の甲冑に包まれていますが、その下からは美しい黒と青のレースが足先を超えてずっと下まで流れています。そしてドレスのスリットからは、足が見えています。太ももには青と黒の紋章がありました。  足元を青く光る文字盤が囲み、周囲には幾重にもゲートが重なり、連なって広がっています。  美しい顔は残酷でありながら同時に慈悲深く、さげすみながらあわれんでいるようでした。  ひれ伏している一来と稜佳の横で、アイラは片腕で目を覆いながら、仁王立ちしています。 「ひざまずきなさい、カルパ様に失礼よ」と、感情のこもっていない固い声で紫霧が言うと、アイラの膝がガクッと折れ、くずれ落ちました。紫霧のその声からは先ほど感じた涙の気配は消え去っています。
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