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「そうか。やっぱり変よね。まあ、この石が当たれば血ぐらいはでるかもしれないけど、大けがはしそうもないし。たいして危険なことではないと思うけど、ちょうど退屈していたところだし、少し調べてもらおうかな」というと、何もない空間に向かって、「マミちゃん、いる?」と呼びかけました。  すると、小さなクモが、天井から糸を垂らして音もなく降りてきました。 「マミちゃん、今日も可愛いねぇ」と、アイラが人差し指を出すと、クモがピョンと飛び乗りました。クモの大きさは薬の錠剤ほどで、くりくりとした丸い目がなんとも愛らしい……とはアイラの談です。クモが苦手な稜佳(いつか)の同意は、得られそうもありませんが。  アイラは私には見せたことのない、ハートの浮かぶ瞳でマミを充分愛でてから、銀色の(ハサミ)で髪の毛先をチョン、と切り取って、マミに精命を分け与えました。 「お願いがあるの。天井に穴が開いたりしていないか、変わったものがないか、調べてくれないかな?」と頼みました。  マミは了解! とでもいうように、黒い瞳をくるりと玉虫色に変え、するすると糸を辿って天井に戻って行きました。
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