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 神カルパは、空中に浮かぶ小さなゲートの一つに手を突っ込むと、何もない空間から完全な形の鏡を引き抜きました。そして表、裏と鏡を検分すると、「黒猫が尻尾で鏡を叩き落としたね」としずかに言いました。 「は……」  神・カルパはゆっくりと甘い声で話しているのに、紫霧はひれ伏して小さく縮こまり、小刻みに身を震わせています。怯えているようでした。 「つまり、紫霧は下位の黒猫に一本取られた、ということか」  カルパは紅霧をチラ、とも見ませんでした。指一本さえ動かさなかったのです。ただ、話し続けていただけなのに、紅霧の耳が、欠けて落ちました。紅霧は前足で頭を抱えるようにして、残った耳を抑えました。  ヒッという稜佳の息を飲む音が響きました。紅霧の頭の白い毛の部分から、マミが飛び出し、さっと切れた耳に糸を絡め、耳を糸でつり上げると、紅霧の頭の毛の中に隠れました。 「これでもまだ、逆さ鏡を元に戻すにはクノチがまだ足りない」 「申し訳ありま……」 「ねえ、紫霧、逆さ鏡はクノチを欲しがっているようだよ」 「ア、アイラを映せば、クノチは満ちるかと」  紫霧は伏したまま、声を震わせて答えました。
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