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「お前たちは、未来が分からぬ。ゆえに常に選択を重ねているだろう? その決断が大きいものであろうと小さなものであろうと。そして何かを選べば、選ばなかった未来がある」 「それは、そうね」と、アイラがうなずく。 「しかし選ばれなかった未来は存在しない。本来ならば。私はそういう存在しない世界の中の紅霧に名を付け、クノチを吹き込んだ。そうして出来たのが、これこの紫霧というわけだ。つまり紫霧は存在しないものなのだ。鏡ですら、存在しているのに」  くすくすと神・カルパは楽しそうに笑った。紫霧は床におでこをつけ、身動きもせず、秘密の暴露に耐えているようでした。 「あたしが選ばなかった選択肢の、あたし? だけど、なぜあたしだったんだい?」 「水神・シンガが紅霧に精命を与える未来を創るため。そのために紅霧の影にクノチを与え紫霧とし、シンガの鳥を盗ませたのだ。お前たちは三次元の人間の分際で、鏡の世界を壊した。シンガが紅霧を使って守ろうとしている世界を、存在しないものであるわたくしの紫霧が壊す。おもしろいだろう?」 「ハイアー・ディメンション……」と、一来がつぶやきました。
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