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「……僕は覚えているよ。教室に夕焼けが差し込んできて、オレンジ色に教室の中が染まっていった。紫霧さんは、きれいだね、って言ったよね。それから僕の顔を指さして、夕焼け色に染まってる、って笑った。 あの時は、確かに綺麗な夕焼けだけど、なぜこんなに嬉しそうなんだろう、って不思議だったけど、初めて見たんだろ? 夕焼け。 ここは美しいけれど闇に囲まれた世界だから、感激したんだろ? あの時、教室にいる僕たちは確かに紫霧さんと一緒にいた。そして夕焼けをきれいだと、思ったんだ。 紫霧さんがいなかったら、ただのありふれた夕焼けだった。紫霧さんは、ちゃんと存在してるよ。思い出がもっと欲しいなら、これから作ろう。それで僕たちの心に強く存在すればいいじゃないか! 」  話しているうちにも、紫霧の精命は鏡に吸い込まれていきます。そして逆さ鏡は喜んでいるように、フルフルと震えながら大きくなっていきます。 「おお、逆さ鏡が肥えていくのう。さてこの逆さ鏡をこの娘の中に入れ、破壊の巫女にするとしよう。自ら自分たちの世界のすべてを砕くがいい」
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