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 紫霧は「ああ」とため息をつくと、重たそうに手を持ち上げました。そして小さな銀色に輝くゲートを出すと、手を差し入れました。銀色の波紋が手の周りに広がると、紫霧はくすりと場違いな笑みを浮かべました。一来がはっとして自分の手の平を見て、また紫霧に視線を戻しました。 「もしかして、あの時、ゲートの中で握手したのって……?」 「一個、貸しだからね……」  紫霧の瞳が一瞬、力を取り戻し、ゲートは人が通れるほどの大きさにまで広がりました。紫霧は私たちの方に手を伸ばしました。 「真堂くん、手を!」と紫霧が叫びました。一来が手を伸ばすと、ゲートの中から見えない何かに手を掴まれ、グイっと引っ張られたようでした。 「アイラ、稜佳ちゃん、つかまれ!」 ゲートに向かって、二歩、三歩と引きずられる一来の手を、慌てて稜佳がつかみました。そして引きずられて行きながら、稜佳は手を伸ばし、すれ違いざまに黒猫をさらうようにして胸に抱きました。 「アイラちゃん、早く! 何しているの?!」 「アイラ、早くつかまれっ! もうゲートに飲み込まれる」 「さあ、行って! ゲートが、もた、ない」紫霧が叫びました。
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