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アイラは静かに立ち、ツインテールをほどきました。金色の髪がさらりと揺れます。 神・カルパをまっすぐに見つめたまま、「紫霧、紅霧の選ばなかった紅霧。ならば、お前も我が一族の眷属。受け取りなさい」と言うと、手で髪の毛をつかみ、銀色の鋏で髪の毛を一束、ザンッと切り落としました。 「黒炎(くろめほむら)!」  アイラの命は私の中に響き、かけめぐりました。身体のあちこちに散らばった精命(まな)残滓(ざんし)が煌めき、右腕の一点に向かって集束していきます。私はアイラの手から、髪の毛の束をすばやく受け取ると、影の腕を伸ばして、紫霧の胸に押し込みました。 「慈悲をかけたものへの命と運命を私は背負う! この者、いらないのなら、わたしがもらうわ!」  神・カルパは紫霧に視線を流しました。白く輝く長いまつ毛がゆっくりと伏せられ、剣を持つ手に力が入りました。 「いけない、カルパ様が剣を! アイラ、お願い、行って!」  紫霧が叫び、同時に空中を押すような仕草をしました。アイラは紫霧の手に押されたように、一来の方に吹き飛びました。アイラが一来の首に抱き付くと、私たちはゲートの中に引き込まれて行きました。  紫霧のゲートは腐蝕しかけていました。あちこちの空間がねじ曲がり、渦をまいています。ゲートが崩れ落ちる寸前、私たちは外に押し出され、落下しはじめました。
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