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 ケケケケケケケ……! というあの笑い声がどこかからか聞こえてきます。  ゲートを抜けると、私たちは水神様の湖の底に沈んでいる島に投げ出されていました。前回来たときよりも気温が高く、吸う息が人間の喉を焼きそうなほどです。私はなんとか意識を繋いでいましたが、紫霧にアイラの髪を届けた時にほとんどの精命を使いつくしてしまったため、指一本動かせませんでした。  人間たちは意識を失っていましたが、やがてアイラが咳き込んで目覚めました。 「あっつい……」 「アイラ、目が覚めたんだね」と言って、少し先に目覚めていた紅霧が稜佳の腕からすり抜けて走ってきました。  アイラが体を起こし、頭を振りながら周囲を見回すと、アイラの目に触れた草花が、根から引き抜かれ、宙に浮きあがり、次の瞬間、花は崩れバラバラと音を立ててシャワーのように降り注ぎました。 「痛っ! 右目を閉じるんだ、アイラ! これは目に吸い込まれた逆さ鏡のせいだ」と、紅霧は注意しました。 「この暑さは神樹に宿る太陽が大きくふくれているんだよ。ほら、神樹の枝や葉も、茶色く焼け焦げているだろう? 神樹の上空に浮かぶ(かめ)からは湖の水が滴っているけど、育ち過ぎた太陽を抑えるには量が足りていないみたいだね」
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