23/31
前へ
/214ページ
次へ
 前回、水神様の島に来たときには、島を取り囲んでいる、湖の水面が遥か遠くに見えていました。しかし今は、島の木々が水面から頭を出してしまいそうです。太陽を鎮火しておくために、湖の水が大量に注がれ、湖の水が少なくなっているのでしょう。 「紅霧、お願い。私を(かめ)の中に連れて行って」 「だけど」 「わかってるでしょ? 水面が下がってきている。時間の猶予はない。 早く太陽を目覚めさせ、私たちの世界に送り出さないと、島が熱で焼かれてしまう。 そうなれば、私たちの世界も、日照りに苦しみ、人の心も干上がってしまうんだよ。ううん。もうそうなりかけている。私、ママを、一来や稜佳がいる世界を守りたいの。私、私たちの世界が、好きみたい。私のこと、何も覚えてないくせに、心に私を住まわせている馬鹿な人達が、好きみたいよ」  瞼を閉じたままのアイラの目から涙があふれました。アイラは指先でさっと涙を払うと、ごまかすように咳払いしました。 「『ウィスハートはwith heart 人を助けて寄りそいなさい』……ウィスハート家の家訓をもちろん知っているわよね? おばあちゃんが私でも、甕に入ることを選択するはずよ」
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加