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「フラーミィ! あなた、話せるの?」とアイラが叫びました。 「おや、そうですね。あっ、あー」私はマイクのテストをするように、発声してみました。「はい、どうやら水神様の水に浸かり、影の私の精命も満ちたようです」  ためしに人型になってみると、以前と変わらぬ姿となることが出来ました。  水神様は紅霧を撫でていましたが、ふと手を止めて眉をひそめました。 「紅霧、耳をどうしたのだ?」  紅霧が黙って尻尾をイヤイヤするように振っていると、紅霧の頭の上の白い毛が揺れ動き、クモのマミがそうっと顔を出しました。丸い瞳を目まぐるしく回して、周囲の様子をうかがうと、糸にくるんだ紅霧の耳を毛の上に押し出しました。 「キミが紅霧の耳を持っていてくれたのだね。さあ、耳をこちらへ」と、言うと耳を手に取り、紅霧の耳に押し付けました。角度を変えてあちこちから眺め、耳の位置を微調整すると、「これでいい」と頷きました。
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