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 アイラは私の意図には気付かず、髪の乾き具合を手で触って確認すると、「うん、完璧ね! Thanks、フラーミィ」と言って、機嫌よく金髪のツインテールを後ろに弾き、机の上に出してあった教科書とノートをしまい込みました。いつのまにか英語の授業が終わっていたようです。  アイラの注意が逸れている間に、私は考えを巡らせました。あの黒猫は小石が落ちてくる事を予見していたようでした。稜佳の足元を走り抜ける黒猫の行動は、たまたま稜佳が前によろけたので、結果的に稜佳を助けたように見えますが、別の見方をすれば、私が稜佳を助けようとしていたのを邪魔するかのような動きとも受け取れます。  (黒猫は敵なのか味方なのか……)  私はチラ、とアイラを見上げました。アイラは次の体育の授業のため、ロッカーから体操服の入った巾着袋を取り出しているところでした。私の視線に気が付くと、なに? というように首を傾げました。  私が親指を立てて外側に傾け、ちょっと離れてもよいですか? という意味の合図を送ると、アイラは軽くうなずいてみせました。
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