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「ぐっ……。アイラって呼んで、って言っているでしょう?」
「わかった、わかった。今度からそうするよ。それで、一緒に行ってもいい? ウィスハートさん!」
紫霧はアイラの記憶を見ているので、ウィスハート家の家訓その一、『ウィスハートはWith heart。名を頼ってくるものは助けよ』が、アイラの精神に、逆らい難く染みついている事をよく知っているようでした。
「はあぁ。もう、勝手にすれば?」
「アイラちゃん? どうしたの?」事情が読めない稜佳はアイラと紫霧の顔を交互にみやりました。
「はーい、勝手にしまーす」と紫霧は片手を宣誓するように肩まで上げました。それからアイラの足元にいた黒猫に手を伸ばしました。黒猫は顔をそむけて、紫霧の手を逃れて走り、少し離れた場所で立ちどまって振り返りました。走り去るか留まるか、考えているようです。
「わーい、一緒に行こうね!」稜佳が紫霧の手を取りました。
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