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「余裕ですね。でもそれもここまでですよ」と呟き、木に飛び移ろうとすると、黒猫は木から飛び降りました。  二階の窓よりも高い木のてっぺんから、躊躇(ちゅうちょ)なく飛び降りるところをみると、やはりただの猫ではないようです。地上から、私をからかうように見上げています。「ついてこられる?」とでも言っているようです。  (生意気な子猫(キティ・キャット)ちゃんですね……!)  黒猫は思いのほか走るのが速く、捕まえようと手を伸ばすとすり抜けて逃げてしまいます。  しかし精命の量は、私の方が多いはず。つまりスタミナは私の方が上、ということです。私は付かず離れずの位置をキープして、黒猫が疲れてスピードを落とすのを待ちました。  駅近くの繁華街まで来たとき、見慣れない物体が道の真ん中に出現しました。人間達はその物体を突き抜け、何事もない様子で歩いていきます。  人間たちの目には映っていないところをみると、この世界の建造物ではないのかもしれません。
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