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 それは四角い額縁のようでした。フランスの凱旋門のようというのが一番近いかもしれません。そして石のような材質に繊細なレリーフが施されています。上部の中央には膝を抱えた女神、両脇に天使、そしてライオンや鳥、羽のある馬……。  ゲートは緑がかった透明な水の中に存在し、その全てが現実世界に重なって透けていました。  (あれはもしや、トゥラナ……。なぜここに……?)  黒猫はトゥラナの前で立ち止まり、こちらを見ると、ひょいとトゥラナの中に飛び込みました。猫が飛び込んだ場所を中心に、トゥラナの中には波紋が広がり、向こう側に景色がゆらめきました。水の中を覗き込んでいるようです。  アスファルトを影の姿で刷いて近寄ると、トゥラナの向こう側から黒猫が見返してきました。 (燃えるような紅い瞳……)  その見覚えのある瞳の色に魅入っていると、ちゃぷん……という水音と共に景色のゆらぎは消え、トゥラナもなくなっていました。もちろん、トゥラナの中にいた紅い目の黒猫もです。  私は黒猫の瞳を思い返しました。同じ色の紅い目の持ち主を、私は一人しか知りません。377c8eb4-24bb-4b7f-9d9f-7aeb27335486イラスト:水色奈月さま
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