黒猫

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 私はアイラの歩調に合わせて歩きながら、空を観察しました。雲の色、厚み、空気の湿気……。雨が落ちてくるまで、あと四分程度でしょう。猶予はさほどありませんが、校舎はもう目の前です。雨に濡れずに建物の中に入れる可能性は高そうですね……。  急に冷んやりとした風が吹き、アイラの制服のスカートがあおられてふくらみました。紺色のプリーツスカートは、正しくは膝下丈のはずですが、太ももの真ん中よりも短くちょん切られているせいで、黒いニーハイソックスの上から白い肌がちらりとのぞきました。  スカートから伸びている足が長いのは、アイラのアメリカ人の父上の血とフィンランド人の母上の血の賜物でしょう。スカートとニーハイソックスのバランスはそれなりに魅力的だと思いますが、トラディショナルな制服のデザインの目的は名門私立彌羽学園の校風である真面目さと清楚さの表出であろうと考えると……、ああ! 非常に残念ながら、だいなしにしていると言わざるを得ません。  極め付きは青色のぼろぼろリュックです。アイラ本人はいたく気に入っている愛用の青いリュックを肩に引っかけるのが、いつものスタイルです。しかしリュックの持ち手は擦り切れて、糸がところどころ飛び出していますし、透かして見れば底から光が差し込む程度に生地が薄くなっています。
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