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「ええ、そうですね」と、アイラの負け惜しみを軽くいなすと、出来上がった二人分の料理を木のトレーに乗せ、ダイニングテーブルに運びました。  十人がゆったりと座ることが出来るテーブルは、無垢のウォールナットで作られています。上品な飴色の艶が美しく、大正時代にこの洋館が建てられた当初より使用されているアンティーク。椅子の座面に貼られたダークな色合いの緑色のビロード生地とも合っています。  大正浪漫の香りが漂う洋館は、専属の大工が定期的にメンテナンスを行い、見えないように改修を施しているので、美しさを保ちつつ、現代の利便性も兼ね備えています。この屋敷に住んでいる人間の中で、もっとも大正浪漫の魅力を理解し愛していらっしゃるのは、アイラの父上ですが、国際線の機長のため家に滞在している事が少ないのは残念なことです。 「フラーミィ、ママは?」 「奥様はスウェーデンと日本の交流を深めるための講演会で講師をなさっていて、本日はお戻りになりません。」 「そう、わかった。じゃあ食べよう、フラーミィ」
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