6/8

81人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「フラーミィの言うとおり、変ね。鋏も石も、こんな風に砕けたりしない。念のため、消しゴムの方も確認した方がいいかな」  アイラのつぶやきが聞こえたのか天井から糸が降りてきました。もちろん糸の先には、小さなクモのマミがいます。テーブルに着地すると、丸い目で見上げました。 「あら、マミちゃん、おかえり~。何かわかった?」 マミは目の色を玉虫色に変えて、視線をアイラから私に向けました。私は唇に人差し指をあてて耳をすませ、マミがたてる小さな鳴き声に聞き入りました。 「マミは、やはり消しゴムも砕けたと言っています。材質の違いからなのか、アイラから消しゴムを受け取り、授業が終わらないうちに粉々になったようですね」  消しゴムが砕けた後、持ち主の山田が(おび)えた顔でアイラを見ていたとのことですが、この情報はお伝えしなくてもいいでしょう。 「ありがとう、マミちゃん」  アイラはいつも通り、髪を切りマミに精命を与えようとしましたが、鋏が砕けてしまった事に気付いて、唇をぎゅっと結びました。 「アイラ、こちらを」 「おばあちゃんの鋏じゃないと……って、これ、どうしたの? おばあちゃんの鋏と全く同じじゃない!」
/214ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加