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「フラーミィの言うとおり、変ね。鋏も石も、こんな風に砕けたりしない。念のため、消しゴムの方も確認した方がいいかな」
アイラのつぶやきが聞こえたのか天井から糸が降りてきました。もちろん糸の先には、小さなクモのマミがいます。テーブルに着地すると、丸い目で見上げました。
「あら、マミちゃん、おかえり~。何かわかった?」
マミは目の色を玉虫色に変えて、視線をアイラから私に向けました。私は唇に人差し指をあてて耳をすませ、マミがたてる小さな鳴き声に聞き入りました。
「マミは、やはり消しゴムも砕けたと言っています。材質の違いからなのか、アイラから消しゴムを受け取り、授業が終わらないうちに粉々になったようですね」
消しゴムが砕けた後、持ち主の山田が怯えた顔でアイラを見ていたとのことですが、この情報はお伝えしなくてもいいでしょう。
「ありがとう、マミちゃん」
アイラはいつも通り、髪を切りマミに精命を与えようとしましたが、鋏が砕けてしまった事に気付いて、唇をぎゅっと結びました。
「アイラ、こちらを」
「おばあちゃんの鋏じゃないと……って、これ、どうしたの? おばあちゃんの鋏と全く同じじゃない!」
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