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 アイラはツインテールをひらりとなびかせ、八段の跳び箱を軽々と跳びました。  彌羽(みわ)学園の体育館は広く、バスケットコートが二面、らくらく取れます。そのため、体育は二クラスが合同で行われ、男子と女子は別々の競技を行っていました。女子は跳び箱、男子はバレーボールです。  跳び箱はだんだん高くなるように横に並べられており、低い方から順番に跳んで、失敗すると脱落していくルールで試験を行っていました。八段の高さでは、半分以上がすでに観客に回っています。九段の高さになると、ぐっと跳べる人数が減り、一番高い十段に挑戦するのは、アイラともう一人しか残っていませんでした。  脱落した生徒達が見守る中、アイラは十段の跳び箱に向かって助走し始めました。しかし踏切板を踏み込む直前、にゃあ、という猫の鳴き声がしました。アイラは鳴き声につられて体育館のドア方向に視線を流してしまい、踏み切るタイミングが微妙にずれてしまいました。 (ぶつかる……!)  踏切が弱く、高さが足りませんでした。これでは跳び箱を跳びきれず、激突してしまうでしょう。私はアイラのお尻を下からトン、とごく軽く押し上げました。しかし飛び越えることは出来ず、ドスンと音を立てて跳び箱の上に落ち、座ってしまいました。  ケケケケケケケ……と笑い声が響きました。すでに失敗して、見学に回っていた誰かが、笑ったのでしょう。 「ちょっとフラーミィ、どうせなら跳ばせてくれればいいじゃない!」アイラは小声で私に文句を言いました。
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