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 アイラはテストを上の空で受けたために、英単語のつづりを一つ間違えていました。とりたてて指摘するような間違いではありません。アイラを下げて、紫霧をあげようという、その生徒の意図が透けて見えました。  揚げ足を取るようなつまらない発言ですが、どうも(しゃく)にさわります。私はその女生徒の後ろから近づき、目を隠しました。 「やっ! なに?!」  女生徒は叫んで宙を見回しました。漆黒の闇に包まれ、何も見えないはずです。他の生徒達も異変に気が付き、彼女に注目が集まりました。女生徒が息を吸い込み、叫ぼうとした頃合いを見計らって開放すると、女生徒は床にへたり込みました。そこまで見届け、私はその場を立ち去ろうとししました。しかし。 ……………………ヒュッ………………  空気が裂かれる音がし、紫霧の目の前に白いシャープペンが落下して、刺さったのです。刺さるはずがないのに、です。床は固い素材で出来ているのですから。シャープペンはふるふると震えて、カタッと倒れました。シャープペンが直立していたのは、時間にすれば一秒もなかったかもしれません。他の生徒は、シャープペンが落ちてきたことには気が付いても、床に刺さる様に立ったことには気付かなかったようでした。
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