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 本来、アイラの影である私は、充分な量の精命を与えられているので、もう精命を食べる必要も、もちろん人間の食事を食べる必要もありません。  とはいっても、人間の食べ物は素晴らしい! その味はもちろんのこと、見た目も美しいスイーツはもはや芸術品だと言っても、差し支えないでしょう。食べることは、私の純粋な楽しみ。まして甘い芸術品を食べる機会を逃すという選択肢はありえないのです。 「稜佳、わたし、『たまたま丸いメロンパフェ』にして」と、私は幼女の声で報酬を要求しました。 「うんうん、わかったよ~。ちびアイラ、美味しそうなの、選んだね~!」と、完璧に私の見た目に振り回され、稜佳はウキウキと端末に注文を入力し始めました。 「あとね、雲のメロンクリームソーダ」 「あ、うん。雲の……ね。」 「それからニャンコのチョコレートケーキ。それに木苺のサワークリームパイでしょ、森のくまさんのパンケーキ。えっと、それから……」 「ちょ、ちょちょちょちょーっと待った!」 「なぁに? 稜佳」 「あのー、やっぱり、ふたつまでしてもらえるかな…?」 「好きなもの、いくらでも、って言ったのにぃ」 「ええっ! 好きな物なんでも、とは言ったけど、いくらでも、とは言ってないよぉ」 「そうだった? ま、いっか。じゃあ、ニャンコのチョコレートケーキとたまたま丸いメロンパフェにする」 「よかったぁ。ちびアイラが聞き分けがよくて」  ホッと眉間の皺をゆるめて、注文する稜佳の様子に、私はこらえきれずに、プハッと吹き出しました。
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