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「ん? なに笑ってるの? ちょっとちびアイラ、もしかして、からかってたのぉっ?!」 「稜佳はDeth Crowのグッズを買っちゃって、お金ないーっていつも言ってるのに、本気でたくさん頼んだりしないよぉ」  それに実のところ、スイーツを食べたければ、稜佳に言われなくとも、アイラの幼少期の姿にならざるを得ないのです。私が映せる人型の姿は、本来の自分、そして過去から現在までのアイラだけなのですから。  本来の私の姿は、人型になると身長が二メートル近くありますし、人間の注目を浴びてしまう顔立ちのようですから、控えた方がいいでしょう。かといって、現在のアイラの姿では、双子だと誤解を産んでしまいます。彌羽学園の関係者に見つかったりしたらやっかいです。  ゆえに、多少……髪を撫でまわされたりするのを我慢する報酬としては、スイーツ二個は充分だと言えるでしょう。 「ねえ、稜佳、注文は済んだ? それならスイーツが届く前に、ドリンクバーに飲み物を取りに行こうよ」  私の好みとしては、苦めの珈琲などの方がいいのですが、幼女の姿でブラックコーヒーは、人間界では許容されないようです。仕方がないので、稜佳に頼み、お店で作っているフルーツ紅茶を注いでもらうことにしました。大きな壺のような硝子瓶の中には、色々な種類のフルーツが、大きめに刻まれて、紅茶に浸っています。  「稜佳、お願い」とグラスを手渡しました。手が届かないのです。  横倒しになった瓶の口には、蛇口のようなコックがついていて、瓶を持ち上げなくても中身を注ぐことができる仕組みです。稜佳がレバーを(ひね)ると紅茶がコップに流れ出し、ほのかにフルーツの甘い香りがしました。
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