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 一来の血を舐めたのがバレてしまったようです。気付かれないように手だけ影にもどし、カメレオンの舌のように伸ばして、すばやく血をかすめ取ったのですが。  ちらりと舌を出して、「ごめんなさい。でも一来、まだ血が出てるよ。舐めてあげようか?」と聞くと、一来は「い、いや、大丈夫!」と言って、ペーパーナプキンを素早く取り、指に当ててギュッと握ってしまいました。 (なんと、もったいない!)私はうらめしくペーパーナプキンににじんだ血を見つめました。一来の血の精命は、アイラの精命量には遠く及ばないとはいえ、平均的な人間の精命の量を超えてとても多く、美味しいのです。身体に先ほど摂取した一来の精命がめぐり、力が湧いてくるのを感じます。やはり一来の血を、紙などに吸わせてしまうのはもったいない……。  精命といえば、稜佳の髪の毛の精命も、なかなかの味でしたねぇ……。残念ながら、ちょっと整髪料の匂いが余計ですが……。 「あの、ちびアイラちゃん、なんだか目が怖いよ……」稜佳が自分の頭を抱えて、髪の毛をガードしつつ横目でチラチラと警戒してきます。 「稜佳、いくらわたしだって、無理やり人の髪を抜いて精命を摂ったりしないよ! たまたま一来が怪我して血が出たからだもん!」
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