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 「稜佳、待って!」  私は稜佳の言葉をさえぎりました。もはや稜佳の記憶違いなどではなく、あり得ない記憶のズレが生じています。 「ねえ、一来は春から今までで、神木さんの思い出は何かないの?」  さらに情報を集めるため、私はことさらに可愛らしく首をかしげて聞きました。 「ええと。そうだなあ……。学校の駐輪場で、ハンドルが隣の自転車とからまっちゃってさ。その時、神木さんに助けてもらったよ」 「それも、私よ!」 「ええ? まさか。その後、お礼にってアイスを奢らされたから、間違いないよ」  アイラがそれも私が、と言おうと口を開きかけて、また閉じました。  一来と稜佳の記憶の中では、過去のアイラの行動が、神木紫霧にすり替わっているのです。私はアイラと目を見交わしました。ずっとアイラと一緒にいる影の私は覚えていますよ、と小さく頷いてみせました。
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