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 アイラは黙ってスプーンを口に運びました。アイラの口と、ブリュレパフェのグラスを往復するスプーンの早さを見て、私は慌てて、「たまたま丸いメロンパフェ」にスプーンを深く突っ込みました。丸くくりぬかれたメロンと、小さなシュークリームそして丸いバニラアイスが、長いグラスからうずたかく積み上がっているので、スプーンですくうと転がってしまいそうで食べにくく、なかなか進みません。  急いで食べましたが、グラスの半分ほどまで食べ進んだとき、アイラのスプーンがグラスの底をつつき、カチン、と小さく音を立てました。残念、終了のゴングです。 「帰るわ」 「待って、もうちょっと! メロンパフェ、まだ半分、残ってるの。ニャンコのチョコレートケーキはまだ来てもいないし」 「そう。それならフラーミィは後から帰って来てもいいのよ。とにかく私は帰る」 「アイラ、なんだか今日、変だぞ。 大丈夫か?」と、一来が聞くと、アイラの顔がくしゃっと歪みました。これは、泣き出しそうな顔、とでも言うのでしょうか? アイラの珍しい表情は私の大好物のはずですが、今度ばかりは私も何とも言えない胸苦しさを感じました。 「変なのは……、変なのは一来と稜佳でしょ! なんで……なんで二人まで、忘れちゃうのよ!」
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