81人が本棚に入れています
本棚に追加
/214ページ
「はあ? なんですって? 私に大切な情報を隠していたっていうこと? それはさぞかし、すばらしい理由があってのことなんでしょうねぇ?」
怒りがまだくすぶっているアイラは、瞳をぎらつかせて睨んできました。
(肩を落としているよりも、肩を怒らせている方が、アイラにはお似合いですね)くすりと笑みがこぼれました。
「ええ、そうですね。不確定な段階で、この情報をお知らせしたら、アイラが悲しむことになるかと思ったのです。鋏が壊れた時も、たいそう動揺なさっておいででしたからねえ……」
売り言葉に買い言葉。私もチクリと刺しました。
「うるさい! 早く言いなさい!」
「泣きませんか?」
「泣かないわよ!」
私はこれでもかという程、間をあけてアイラのジリジリしている表情を堪能してから、おもむろに言いました。
「実は、あの黒猫には影がありませんでした」
「影がない……?」
「そうです。影がない、ということが示す意味は、今の私のように、影が実体化したものであるか、マミのように影と実体が同化したものであるか、のどちらか……であると考えるのが妥当ではありますが」
「そうね。でも影が実体化する場合、主の写し身か本来の自分の姿にしかなれないはず。猫が主である可能性は?」
最初のコメントを投稿しよう!